概要
学術集会
がん登録・がん統計について
藤本伊三郎賞
刊行物・業績
表彰制度
都道府県がん登録室
関連資料
新着情報
リンク集
お問い合せ
会員ログイン

関連資料

ホーム関連資料>地域がん登録の法制化を求める要請書
 
地域がん登録の法制化を求める要請書

2012年3月26日

厚生労働大臣
小宮山 洋子 様

我が国のより一層のがん対策推進のため、日本政府が以下の政策を講じるよう要請します。

第1、要請の趣旨

  1. 現在、全国都道府県などの自治体において実施されている地域がん登録事業の法制化を図ること
  2. 地域がん登録事業の円滑な実施に必須である関連統計の利用ができるよう、法制化とあわせて、現行関連法規の見直しを図ること

第2、要請の理由

がんは我が国の死亡原因の第1位を占め、がんで死亡する方の数は増加の一途をたどり、私たちの生活を脅かす存在となっています。生涯のうち二人に一人がかかる国民病となったいまこそ、有効ながん対策を推進することが緊急の課題です。がん対策を計画、実行、評価し、今後の対策に生かすためには、がんの実態(死亡率、罹患(発生)率、生存率など)を正確に把握することが必要です。偏りのない正確な罹患や生存率の実態は「地域がん登録」によってのみ把握が可能です。

この「地域がん登録」とは、がんを診断、治療した医療機関や死亡を確認した医療機関から、地域における全がん患者の診断・治療情報を集めて整理・集計・解析を行い、がんの予防と医療の進歩に役立つ情報を提供するシステムです。「地域がん登録」ではがん症例の重複登録を避けるために個人識別指標(氏名、性別、生年月日、住所)も集めています。

平成18年に制定された「がん対策基本法」の第十七条第二項において「国及び地方公共団体は、がん患者の罹患、転帰その他の状況を把握し、分析するための取組を支援するために必要な施策を講ずるものとする。」と規定されました。本法に基づいて平成19年に策定された「がん対策基本計画」においては、重点課題としてがん登録の推進が掲げられ、本年2月1日に公表された、次期がん対策基本計画の素案の中では、個人情報の保護を徹底しつつがん登録情報の有効活用ができるよう、法的位置づけの検討も含めたがん登録の体制整備を5年以内に図る旨が述べられています。

欧米諸国では古くから法律に基づいた「地域がん登録」が展開され、がん対策の評価や新たな対策の立案に活用されてきました。近年では、韓国、台湾といった東アジア諸国においても法を根拠とする地域がん登録事業が急速に整備され、がん対策の柱となっています。我が国では昭和40年代から道府県市を単位として事業が開始され、平成24年度にようやく全47都道府県での実施が実現する予定です。

しかしながら、全国規模の実施となったものの、法的根拠があいまいな現状においては、様々な実務上の障壁があるため、非効率な作業が残存し、結果として、欧米や東アジア諸国と比較してわが国のがん情報の質は低いと言わざるを得ません。また、原子力発電所事故による健康影響等に関し、国民の不安と関心が高まっており、社会における発がんモニタリングとしての地域がん登録の役割は一段と重要なものとなりました。

NPO法人地域がん登録全国協議会は、地域がん登録事業実施地域のうち、37道府県市を会員とし、我が国で唯一の地域がん登録に関わる団体です。わたしたちは、「がん対策基本法」の基本施策(がんの予防及び早期発見の推進、がんの医療レベルの地域格差の是正、研究の推進等)に寄与し、次期がん対策基本計画の個別目標を達成するため、そして原子力発電所事故による放射線被ばくなどの国民の健康への影響を正確に把握し適切な対策を立案するためにも、日本政府が、地域がん登録に関する新たな法律の制定とともに、現行関連法規の改定や例外条項の明記などの法整備により、以下に掲げる事項を早急に推進することを強く求めます。

  • 地域がん登録に必要な情報を漏れなく集めるために、情報の収集や提出に取り組む都道府県などの自治体、医療機関を支援し、「地域がん登録」を促進すること
  • 登録されたがん患者の生死を確認するために、国が保有する、電子化された人口動態統計の死亡情報や市区町村の住民基本台帳情報の利用促進をすること
  • 地域がん登録における個人情報取扱いに関する安全管理強化策を支援すること
  • 地域がん登録の公衆衛生上の意義及び必要性について、国民への周知を図ること
  • がん登録情報を国民、患者、医療従事者、行政担当者、研究者等が利用できる体制を整備し、積極的にがん対策に活用すること

特定非営利活動法人地域がん登録全国協議会
理事長  津熊秀明(大阪府立成人病センター)
理事   早田みどり(放射線影響研究所)
理事   西野善一(宮城県立がんセンター)
理事   戸堀文雄(秋田県総合保健事業団)
理事   茂木文孝(群馬県健康づくり財団)
理事   柴田亜希子(国立がん研究センター)
理事   三上春夫(千葉県がんセンター)
理事   藤田学(福井社会保険病院)
理事   田中英夫(愛知県がんセンター)
理事   有田健一(広島県医師会)
理事   安田誠史(高知大学)
監事  大木いずみ(栃木県立がんセンター)
専門委員 祖父江友孝(大阪大学)
専門委員 服部昌和(福井県立病院)
専門委員 伊藤秀美(愛知県がんセンター)
専門委員 井岡亜希子(大阪府立成人病センター)
専門委員 片山博昭(がん統計センター)
事務局長 松田智大(国立がん研究センター)

 
当サイトのリンクについて