がんの治療(保険診療)


病院での治療は、外科治療、放射線治療、化学療法の3つの組み合わせで行われます。これを標準治療と呼んでいます。 がんの種類によっても有効な治療方法や組み合わせは異なります。現在のがんの治療は、手術、放射線、薬物療法(化学療法)などいくつかの治療法を組み合わせる集学的治療が主流になっています。

医師や家族などと充分に相談の上、治療方針を決定することが必要です。

■外科治療(手術)

ここでは、局部麻酔または全身麻酔にかかわらず、少なくとも一泊以上の入院を必要とする手術を対象にしています。

手術は腫瘍の一部または全部を取り除くものです。みなさんの手術はどの範囲の切除を予定しているのかなどにつき、正確な説明を受ける必要があります。がんの専門病院には、人工肛門、人工膀胱、乳房切除、喉頭切除(声帯を取るために声が出なくなる。食道発声や人工喉頭が可能)のような手術について話し合い、説明してくれる専門の看護師がいるはずです。

みなさんは手術前に、手術の同意書にサインを求められます。完全に理解するために、同意書には何が記してあるのかを質問しましょう。その質問に対して十分な回答を得た場合に、同意書にサインをしましょう。

■放射線治療

放射性物質を用いた治療です。治療の前には、放射線専門の治療医が十分な説明をしてくれます。その説明の仕方は、①治療内容を詳しく書いた説明書を用意している場合、②担当医が書面に書いて説明する場合、③口頭で説明する場合、があります。どの場合でも説明の後に同意書にサインを求められます。わからないことがあれば、同意書にサインする前に確認することが大切です。

放射線治療は、がんの種類、がんの部位、用いられる放射性物質の種類、用いられる方法によってさまざまです。治療前に、主治医や担当の看護師に確認しておくとよいでしょう。

■化学療法(薬物療法)

薬物を使う治療のことです。抗がん剤、ホルモン剤や症状を和らげるために使う鎮痛剤、制吐剤も薬物療法の1つです。ここでは主に抗がん剤、ホルモン剤について説明します。

【抗がん剤治療】

抗がん剤によってがん細胞を死滅させたり、増殖を抑えたりする治療方法です。抗がん剤の投与方法は、点滴や注射、錠剤などの内服です。血液を通して全身をめぐるため、ごく小さな転移にも効果があります。現在約100種類近くありますが多くの場合、すべての細胞にとって有害であるため、殺細胞性治療と称されています。そのため、脱毛、吐き気、倦怠感、しびれ感など、副作用の症状や、肝臓や腎臓、造血器官などへの障害が避けられないのが難点です。

しかし、吐き気などの副作用をやわらげたり抑えたり、白血球の減少を抑える薬の開発などによって、日常生活に支障がない程度に、症状を軽くできるようになってきています。また最近は、がん細胞だけに作用する分子標的治療薬の開発が進み、実用化されているものが増えています。

【ホルモン療法】

乳がんや子宮がん、前立腺がん、甲状腺がんなど、ホルモンが密接に関わっているがんに対しては、「ホルモン療法(内分泌療法)」がよく行なわれます。特定のホルモンの分泌や作用を抑制することで、がん細胞の活動を抑えて腫瘍を小さくしたり、転移や再発を抑えたりする薬剤治療の1つです。副作用は比較的少なめですが、1日に1回または2回、できれば1年またはそれ以上にわたって抗ホルモン剤を内服する方法や注射による方法が行われています。

編集・監修 片山佳代子『がんと共にあゆむ~はじめて「がん」と診断された患者さんへ~』第5版(2019年)
発行:がん医療と患者・家族を支援する会