地域がん登録全国協議会の概要【活動目的・内容】
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がん登録が役立った例

がんの罹患 l 患者の生存率 l がん登録 l がん登録が役だった例

前立腺がん、膀胱がんの罹患、死亡の実態を把握すると同時に医療の向上に寄与

分野 1.がん対策・企画(1次予防),3.臨床医学(3次予防),5.疫学研究・研究推進
活動時期 1999年
活動地域 兵庫県
活動主体 兵庫県地域がん登録
 
背景 高齢人口の増加及び食生活の欧米化とともに前立腺がんの罹患数、罹患率は増加している。膀胱がんも高齢者で罹患の増加がみられている。これらのがんは患者に高齢者が多い事、QOL を保ちながら根治性を高める必要がある事が治療の困難な点である。兵庫県では泌尿器科領域からの届出が少なく1984 年までは死亡票のみによる登録が約50%を占めていたが、1985 年以降届出精度が向上してきたのを期に前立腺、膀胱がんの医療評価を行い、今後の医療の向上に寄与しようとした。
主な活動内容 1. 1973-96 年の罹患数、罹患率、死亡数、死亡率の推移 2. 1982-96 年の診断時進行度 3. 1982-96 年の受療検査と治療 4. 1983-91 年診断届出患者の5年生存率
成果 【前立腺がん】 1. 年齢調整罹患率(世界人口使用)は1973-75年2.5、1985-87年6.2、1994-96 年8.9に、死亡率は各活動時期2.0、3.1、4.3に増加。罹患率の増加が大きく両率に乖離がみられた。年齢階級別では罹患率は75才以上の増加が大きい。死亡率は74才以下で減少ないし横ばいである。 2. 発見時の進行度は判明者の46.9%が「遠隔転移あり」である。(1992-96年)高齢者ほど率は高い。 3. 1992-96年では切除率は34%(治癒切除14%)、内視鏡摘除は10%である。切除率は1982年から変化がなかったがホルモン療法は増加した。限局性でも治癒切除率は60才代51%、70才代33%、80才以上10%、内視鏡摘除各々22%、36%、32%で年齢がすすむにつれ内視鏡摘除とホルモン療法が多かった。 4. 1989-91年診断届出患者の5年相対生存率は55%で1983-85年51%より有意に向上した。治癒切除の生存率の向上はみられたが、内視鏡的除は例数は増加しているが生存率は低下していた。(1989-91年で各々89%、71%) 5. 進行度別では限局性90%、遠隔転移あり34%であった。(1989-91年) 【膀胱】 1. 男では1973-75年3.6、1985-87 年6.7、1994-96 年7.9と増加してきているが、1988年以降では横ばいである。75才以上で増加率が大きい。死亡率は横ばいであったが1994年で減少している。(1991-93年3.6、1994-96年2.9)女では罹患率は各活動時期1.4、1.6、1.8でほぼ横ばい、死亡率は1.2、0.8、0.7で減少している。 2. 進行度は男女ともに限局性が60-70%である。遠隔転移率は女の方が高く特に70才以上で高い。 3. 切除率は減少し内視鏡切除が増加している。1982-86年と1992-96年では男の治癒切除は44%から23%に、内視鏡切除は13%から57%に変化した。 4. 1989-91年患者5年相対生存率は男は77%、女68%で男では生存率は向上しているが女では変化なかった。女では70才以上の生存率が低い。 5. 治療法別の5年相対生存率は治癒切除例では低下した。これは症例選択の変化のためと思われる。内視鏡的切除例数は大幅に増加しているが生存率の上昇はなかった。
導入および確認された制度・法律・学説 1. 前立腺がんの増加が75 才以上で高い事が確認された。 2. 前立腺がんは発見時、遠隔転移例が約半数である。早期発見のための方策が必要である。 3. 前立腺、膀胱がん共に内視鏡的切除が増加している。内視鏡摘除の5 年相対生存率の上昇は観察されない。正確な病期診断法を確立し適切な治療を行う必要がある。 4. 高齢やQOL のため根治度を最優先できない場合もあると思われる。有効な補助療法の開発が必要である。
主要文献 1. 石田輝子他:兵庫県がん登録からみた前立腺、膀胱癌の医療評価.兵庫県立成人病センター紀要 16 巻,1-12, 印刷中.
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